大学へ入る学生が、動画で飲料やバッグを知る。大学の催しで実物を試し、気に入ればAmazonで買う。
Amazonで企業の広告を扱うAmazon Adsは、2026年8月31日に「First Day Ready」を発表した。飲料、バッグ、調理家電を売る3社が参加する米国向けの企画である。
これは、学生が商品を知ってから買うまでを、Amazonが自社の動画、音楽、買い物サービスで続けて案内する試みである。本稿では、何をする企画なのか、Amazonがなぜ実行できるのか、企業が成果をどう確かめるべきかを説明する。
用語メモ
- First Day Ready:大学入学前の学生へ、3社の商品を動画や大学の催しで紹介する米国の広告企画。
- Brand Innovation Lab:企業から頼まれ、Amazonの動画、音楽、買い物サービスに広告を出す社内チーム。
- Brand Store:一つの会社の商品をまとめて見せる、Amazon内の専用ページ。
- Amazon Marketing Cloud:広告を見た人が商品を買ったかなどを、個人の名前を出さずに調べる道具。
Amazon First Day Readyとは、学生が商品を知り、試し、買うまでを助ける広告企画
First Day Readyには、Gatorade、Michael Kors、SharkNinjaが参加する。飲料、バッグ、調理家電を売る3社である。Amazonの公式発表をもとに学生の動きを追うと、三つの段階に分かれる。
1. 動画で知る。 7月1日から、3社が商品を紹介する動画とBrand Storeを公開した。Prime Videoの広告、Fire TVの画面、動画を作る人の投稿も使う。 2. 大学で試す。 9月5日、米ウィスコンシン大学で試食、ゲーム、商品体験を行う。Wisconsin Unionの公式案内では、ライブへの入場は同大学の学生に限られる。 3. 動画を見て、商品を買う。 Kane Brownの公演も配信する。配信先はPrime Video、Amazon Music、Twitch、Fire TV、Samsung TVである。商品はAmazonのBrand Storeで見られる。
Amazonは、18〜24歳と大学生が通常の半額で使えるPrime会員制度も紹介する。広告を見る、大学で商品を試す、ライブを見る、商品を買う。別々に見える行動を、学生が進む順に並べたわけだ。
ただし、大学の催しは記事公開時点で開催前である。何人が参加し、何人が買ったかはまだわからない。Amazonが目指すことと、実際に出た成果は分けて見る必要がある。
Amazonは買い物、動画、音楽を持つため、学生が使う場所へ続けて広告を出せる
企業はふつう、テレビ、動画、店、イベントごとに広告を頼む。First Day Readyでは、Amazonの一つのチームが、動画を見るところから商品を買うところまでを考えた。そのチームがBrand Innovation Labである。
Amazonはネットの店だけではない。Prime Video、Amazon Music、Twitch、Fire TVも持つ。そのため、大学入学前の学生が使う別の場所へ広告を出し、その次に商品ページを案内できる。
この考えは今回だけではない。Amazon Adsは4月30日、スポーツの試合や番組の公開など、人の関心が高まる時期の前後にも広告を出す方針を示した。First Day Readyでは、その時期を大学入学にした。
Brand Innovation Labは、Amazonで商品を売っていない企業も利用できる。ただし、最低出稿額があり、広告が完成するまで数週間から数カ月かかる。どの会社でも、すぐ同じことができるわけではない。
Amazonによると、2026年4〜6月の広告売上高は198億ドルだった。前年の同じ時期より26%増えた。ただし、これはFirst Day Readyの成果ではない。Amazonの広告事業全体の数字である。
Amazon Marketing Cloudを使えば、広告を見た後に商品を買った人がいたかを、名前を出さずに調べられる。一方、大学で商品を試した人と購入した人をどう結びつけるか、比べる相手や調べる期間は公表されていない。
広告・マーケティングの仕事に生かせる3つの学び
1. 広告を出す場所より、客が商品を必要とする時期を先に決める
Amazonは、動画や大学の催しから考え始めたのではない。学生が新しい生活を始める時期を先に決めた。自社でも、卒業、引っ越し、就職など、客が商品を必要とする時期を一つ選ぶところから始められる。
2. 広告の次に、客が何をするかまで決める
First Day Readyでは、動画で知り、大学で試し、Brand Storeで買う。広告を見せて終わりではない。TikTokの動画を街の画面へ出すときに誰が責任を持つかと同じく、場所が変わるたびに、誰が客を次へ案内するかを決めたい。
3. 知った、試した、買ったを別々に数える
動画を見た人数、大学で試した人数、商品を買った人数は、同じ成果ではない。Amazonも詳しい調べ方を公表していない。ブランディングとマーケティングの違いを踏まえ、知ってもらう目標と、買ってもらう目標を分けて数える必要がある。
Sources / 参考資料
Wisconsin Union, “Amazon Music Presents OFF TO COLLEGE with KANE BROWN”
Amazon Ads, “Brand Innovation Lab”
Amazon Ads, “How brands can turn high-attention moments into lasting customer connections” (2026-04-30)
Amazon, “Q2 Earnings: Andy Jassy on what’s driving Amazon Ads growth”
Amazon Ads, “Amazon Marketing Cloud”
