東京を旅行中の人が、スマートフォンで近くの靴店を探す。店を選び、現在地からの道順を開く。高徳地図(AMAP)は、中国で広く使われる地図・道案内アプリだ。ネット広告を支援するHakuhodo DY ONEは2026年9月2日、日本の店や施設を中国語で載せる支援を始めた。広告を見る場と道を調べる場が一つになる。ただし、道順検索は来店や購入の証明ではない。本稿では、旅行者が店を見つける仕組みと、企業が測れる範囲を解説する。
用語メモ
- 訪日中国人:中国から日本を訪れる旅行者。この記事では、日本で店や施設を探す人を指す。
- POI(地点情報):地図に登録する店や施設の情報。名前、場所、営業時間など、目的地を探す手がかりになる。
- 周辺検索:今いる場所の近くにある店や施設を探すこと。
- 経路検索:現在地から目的地までの道順を調べること。関心より来店に近い行動だが、来店の証明ではない。
高徳地図(AMAP)とは、訪日中国人が店を探して道順を見るアプリ
高徳地図は、中国語では「高德地图」と表記される。旅行者は地図で店や施設を探し、現在地からの道順を確認できる。今回の支援では、日本の企業が店名、場所、営業時間などを中国語で登録する。地図のこの店舗情報をPOIと呼ぶ。
使われ方は順番で考えるとわかりやすい。まず、店が正しい店舗情報を地図へ載せる。次に、旅行者が「近くの靴店」などと検索する。候補から店を選ぶと、詳しい情報と道順が出る。商業施設などはクーポンも配れる。
今回、Hakuhodo DY ONEは高徳地図の公式パートナーになった。これにより、i CROSS BORDER JAPANと共同で、日本企業の店舗登録や広告配信を支援する。旅行前のSNS広告とは違い、旅先で「次にどこへ行くか」を決める時点に入り込む。
ここで大事なのは、広告を買う前に店の事実を整えることだ。店舗情報がなければ、近くを探す旅行者の候補に入りにくい。営業時間や場所が古ければ、休業中の店や移転前の住所へ案内してしまう。広告の入口は、店名や営業日の確認なのである。
日本の店は、表示・詳しい情報・道順検索の3段階を測れる
Hakuhodo DY ONEは提供開始前に、ASICS RUNWALK銀座店など複数店で試した。同社の2026年9月2日付資料は、確認できる数字を三つ挙げる。店が地図に表示された回数、詳しい情報を見た回数、店までの道順を調べた回数である。
三つの数字を順に見れば、店を知らなかった人が目的地として考える手前までを追える。表示は「目に入った」、詳しい情報の閲覧は「候補にした」、経路検索は「行き方を調べた」に近い。地図は案内の道具であると同時に、店を比べる画面になった。
ただし、公表資料は実際に来店した人数、購入額、比較対象、計測期間を示していない。道順を調べても予定を変える人はいる。複数の店を調べる人もいる。「来店意欲が高い」という同社の説明は仮説であり、購入の実績ではない。
広告担当者は三段階を分けたい。まず、店名や営業時間が正しく表示されたか。次に、詳細ページや道順が調べられたか。最後に、来店や購入が増えたかである。最後の段階を確かめるなら、クーポン利用、店舗の会計、来店計測など、地図の外にある記録が必要になる。
市場全体の数字も、店の成果とは分けて読む必要がある。日本政府観光局によると、2026年7月の訪日外客数は344万2100人で、前年同月比0.1%増だった。観光庁は同年4〜6月の旅行消費額を約2.5兆円、1人当たり24.4万円と推計する。これは高徳地図の利用者数や来店効果を示す数字ではない。
ブランディングとマーケティングの違いで整理したように、知ってもらう成果と買ってもらう成果は同じではない。地図はその間にある「目的地として検討した」を見せる。だから、表示回数だけで成功とせず、経路検索から実来店へ進んだ差を確かめる必要がある。
店舗と自治体が高徳地図から学べる3つのこと
1. 広告を出す前に、店の事実を直す
高徳地図の支援は、店や施設の地点情報を正しく載せるところから始まる。広告が人を呼んでも、営業時間や入口が違えば体験を壊す。まず地図上の名称、場所、営業日、対応言語を実店舗と照合したい。
2. 旅行前と滞在中で伝える内容を変える
SNSは旅の候補をつくり、地図は今いる場所から次の目的地を選ぶ場面で使われる。高徳地図は周辺検索や移動中に情報を出せる。担当者は、旅の前に見せる物語と、現地で必要な距離、時間、在庫、入口の案内を分けるべきである。
3. 道順検索を来店と呼ばない
ASICS RUNWALKの事例で確認できたのは、表示、詳細閲覧、経路検索である。ここから実来店と購入へ進んだ数は公表されていない。次の施策では、地図の数字とクーポン、会計、来店記録をどこまで安全につなげられるかを先に決めたい。
地図広告が変えたのは、訪日客へ届く場所だけではない。店を知った後、目的地として調べたところまでを数えられるようにした。企業が次に判断するのは、経路検索を成果の終点にするか、その先の来店と購入まで別の記録で確かめるかである。
Sources / 参考資料
