生成AIの回答に自社の情報が引用されるかどうかを、企業が気にするようになった。その関心に応えるかたちで、AI検索最適化、LLMO、AIOと呼ばれる施策が急速に増えている。
ただしGoogleの公式ドキュメントに書かれているのは、ほぼ逆の内容である。AI OverviewsやAI Modeに表示されるための追加の技術要件はなく、新しい機械可読ファイルもAIテキストファイルも、専用のschema.org構造化データも必要ないと明記されている。
一方で、企業が決められることは増えた。2026年6月3日、GoogleはSearch Consoleに生成AI機能向けのパフォーマンスレポートを追加し、AI OverviewsとAI Modeでの表示回数を単独で確認できるようにした。生成AI機能へ自社サイトを含めるか除外するかを選ぶ設定も、一部のサイト所有者へ提供されている。
求められているのは、対策の発明ではない。参加条件の管理に近い。
Googleは「AI検索専用の最適化は不要」と書いている
まず条件を確認する。ドキュメント「AI features and your website」(最終更新2025年12月10日)は、AI OverviewsやAI Modeに参照リンクとして表示される資格を二点に限っている。インデックスされていること、そしてスニペット付きでGoogle検索に表示される資格があることだ。
そのうえで「追加の技術要件はない」と書く。「これらの機能に表示されるために、新しい機械可読ファイル、AIテキストファイル、マークアップを作る必要はない」とも続き、専用の構造化データも不要だと明記している。
不要と書かれていることの裏側には、必要だと書かれていることがある。robots.txtとCDNやホスティング環境の両方でクロールが許可されていること、内部リンクで記事が見つけやすいこと、重要な内容がテキストとして読めることだ。
構造化データがページの表示テキストと一致していること、ページ体験が良好であることも挙がる。2025年5月の公式ブログも、独自性のある内容、ページ体験、技術要件、プレビュー制御という同じ順序で説明している。
もう一つ、実務に効く記述がある。AI OverviewsとAI Modeは「query fan-out」と呼ばれる方法で、一つの質問を複数の関連検索へ分解して回答を組み立てる。
この説明を素直に受け取るなら、効いてくるのは代表キーワード一つの順位ではない。質問が枝分かれしたときに、どの枝にも答えられる情報が自社サイトに残っているかどうかである。
用語の定義、前提条件、価格や仕様の根拠、失敗例。周辺の説明を別ページで曖昧にせず書き切れているかが問われる。この点はAI時代に文脈が問われる理由とも重なる。
つまりGoogleが否定したのは、AI検索のためだけに存在する追加作業である。既存の検索最適化を丁寧にやることが、そのまま対応になる。
測れるようになったのは、いまのところ「表示回数」だけである
2026年6月3日の公式ブログによると、新しい生成AIパフォーマンスレポートで確認できるのは五つである。表示回数、表示されたページ、国、デバイス、日付で、日付は時間単位から月単位まで追える。
Search Consoleのヘルプは、対象がAI OverviewsとAI Modeだと説明する。Discover向けは別レポートで、Search Labsの実験は含まれない。データは全体のパフォーマンスレポートに含まれるウェブ検索から作られる。
注意すべきは、公表された項目にクリック数、クリック率、検索クエリが含まれていない点だ。Googleは今後の指標追加を検討すると書いており、レポート自体も一部のサイトへ段階的に提供されている。
この制約は、企業の評価設計をむしろ整理する。生成AIの回答内で引用された回数と、そこから自社サイトへ届いた訪問と、その訪問が生んだ行動は、もともと別の指標である。
Googleは、AI Overviewsが表示された検索結果からのクリックは滞在時間が長い傾向にあると説明する。ただしこれはGoogle側の説明であり、自社の申込や問い合わせにつながったかどうかは、解析ツールで別に確かめる必要がある。
現実的な運用は、指標を三層に分けることだ。AI機能での表示回数とページ、検索全体からの訪問、訪問後の行動である。
第一層が伸びて第二層が横ばいなら、回答内で完結する質問が増えたと読める。第三層が保たれているなら、流入の減少がそのまま失敗を意味するわけではない。
掲載するかどうかは、サイト側が選べるようになった
見落とされやすいのが、Search Consoleに追加された「Search generative AI control」である。設定画面から、自社サイトのリンクと内容を生成AI機能に含めるか、除外するかを選べる。既定値はすべてのプロパティで「含める」だ。
除外を選ぶと何が起きるかも明記されている。AI OverviewsとAI Mode、Google Discoverの生成AI機能で、自社サイトへのリンクも内容も表示されなくなる。回答を根拠づける材料としても使われず、これらの機能からの表示回数とトラフィックはゼロになる。
反映には数日かかる。通常は設定が有効になってから1〜2日で除外されるが、キャッシュや伝搬の都合でさらに時間を要する場合がある。
重要なのは、この設定が持つ範囲の狭さである。Googleは、この制御をランキングや検索全体の掲載の判断には使わないと書いている。学習に対する制御でもなく、そちらはGoogle-Extendedが担う。
検索から完全に消したい場合はnoindexを使う、とも整理されている。さらに、自社を除外しても、他サイトの類似した内容は同じ機能に表示され続けると注記している。
つまり除外は、AIの回答そのものを止める手段ではない。回答が生まれる前提は変わらないまま、そこに自社の名前とリンクが載る機会だけが消える。
自社の説明が省かれた要約が流通することを避けたいなら、除外は逆に働く。検討するときは、権利や表示の懸念と、可視性の喪失を同じ表に並べたい。
Googleの外では、許可条件が別に設定されている
企業が触れるAI検索はGoogleだけではない。OpenAIの公開ドキュメントは、用途ごとにクローラーを分けている。
OAI-SearchBotはChatGPTの検索機能で結果に表示するためのもの、GPTBotは基盤モデルの学習に使われる収集である。ChatGPT-Userは利用者の操作を起点にページを開く動きで、広告の審査にはOAI-AdsBotが使われる。
これらの設定はそれぞれ独立している。学習には使わせたくないが検索結果には出したい場合、GPTBotを拒否しつつOAI-SearchBotを許可できる。
逆にOAI-SearchBotを拒否したサイトは、ChatGPTの検索回答に表示されなくなる。robots.txtの更新から反映までは約24時間とされ、ChatGPT-Userは利用者の操作が起点となるためrobots.txtの規則が適用されない場合があるとも書かれている。
ここでの実務は単純だ。面ごとに、学習、検索表示、利用者起点の取得という三つの用途を分けて棚卸しし、どれを許可し、どれを断ったのかを記録する。
判断そのものより、判断した事実と理由を残せていない企業が多い。AIをめぐる判断が広報、法務、情報システムに分散するほど、記録を残す手順が効いてくる。
AI検索に向き合う企業発信の3つの判断
1. 対策を買う前に、参加条件を満たしているか確認する
robots.txtでの拒否、CDNやWAFによるボットの遮断、重要情報の画像化。これらはAI機能以前に、検索の入口を閉じる。
Googleが不要だと書いた作業に費用を払う前に、自社の設定が公式条件を満たしているかを見るほうが早い。
2. 指標は「表示」「訪問」「行動」に分けて読む
生成AIパフォーマンスレポートが出すのは表示回数である。クリックや行動と混ぜて一つの数字にすると、回答内で読まれた事実も、流入の質の変化も見えなくなる。
分けて置いてから、増減の意味を議論する。
3. 掲載可否は、広報と法務が同じ表で判断する
生成AI機能からの除外は、権利上の懸念への対応であると同時に、可視性の放棄でもある。どちらの副作用も、一つの部署では判断しにくい。
ブランドの評価指標と同じで、選択の結果を追える形にしてから決めたい。
