収入を増やしたい人は多いはずなのに、副業をしたい人は減っている。日本生産性本部の第19回「働く人の意識調査」で、現在は兼業・副業をしていないが、将来はしてみたいと答えた割合は27.6%だった。2020年7月の40.2%から12.6ポイント低い。
27.6%は、現在の副業実施者を含む“副業に前向きな人の総数”ではない。 2026年7月調査では、「兼業・副業を行う気はない」が63.3%で、残りには現在実施している人と将来意向のある人が含まれる。質問の選択肢を確認せず、“副業する人が27.6%”と書くと定義がずれる。
同じ調査ではテレワーク実施率が過去最低の14.5%となり、週5日以上出勤するテレワーカーも増えた。しかし、出社回帰が副業意向低下の原因だと直接証明した分析ではない。本業の多忙化や成長意欲の変化も仮説として分け、企業と個人が何を確認すべきか考える。
27.6%は“将来してみたい”と答えた1,100人調査の一項目
第19回調査は、2026年7月6日と7日に、20歳以上の企業・団体の雇用者1,100人へインターネットで実施された。自営業者や家族従業者などは対象外である。全国のすべての働く人を数えた統計ではなく、継続的に同じテーマを追う意識調査だ。
兼業・副業の設問には、現在行っている、現在は行っていないが将来行ってみたい、行う気はない、といった選択肢がある。27.6%は真ん中の将来意向である。実施率、希望率、企業の許可率、副業求人の応募率は別の数字として扱う。
2020年7月の第2回調査では、将来してみたいが40.2%、現在行っているが8.7%だった。2026年の27.6%との差は12.6ポイントである。割合の差を“12.6%減”ではなく“12.6ポイント低下”と書くと、相対変化との混同を避けられる。
出社回帰と意向低下は同時に見えるが、因果は確定していない
第19回調査では、テレワーク実施率が14.5%となり、過去最低を更新した。テレワーク実施者のうち週5日以上出勤する割合は32.5%で過去最多、出勤0日は10.6%で過去最少だった。働く場所がオフィスへ戻る動きは同じ調査で確認できる。
通勤時間や固定された勤務時間が増えれば、副業へ使える時間は減る可能性がある。しかし、個々の回答者について出社日数が増えたから意向が下がったと示す因果分析は、公開された概要からは確認できない。二つの傾向が同時にあることと、一方が他方の原因であることを分ける。
2026年1月調査では“行う気はない”が69.2%まで増え、7月には63.3%へ下がった。短期では副業への否定がやや弱まっている。2020年からの長期低下と、直近半年の揺り戻しが同時にあるため、“副業ブームが完全に終わった”と一方向に決め付けられない。
- 長期比較:将来意向は2020年7月40.2%から2026年7月27.6%へ低下
- 直近比較:“行う気はない”は2026年1月69.2%から7月63.3%へ低下
- 勤務場所:テレワーク実施率は14.5%で過去最低
- 因果の限界:出社回帰が意向低下を起こしたとは直接証明されていない

副業の魅力より、始めるまでの摩擦が大きくなった可能性を考える
副業には、案件探し、就業規則の確認、申請、税務、労働時間、秘密保持など複数の手続きがある。本業が忙しいと、実際の副業時間だけでなく、始める準備が負担になる。収入を増やしたい気持ちがあっても、“将来やってみたい”と答える余力は下がり得る。
企業側が副業を認めても、申請の基準が曖昧、上司へ言いにくい、評価への影響が不明なら利用されない。制度の有無だけではなく、どの仕事が可能か、総労働時間をどう管理するか、競業や情報管理を誰に相談するかを具体化する必要がある。
個人側も、副業を収入だけで決めない。学び、人脈、独立準備、地域貢献など目的によって適した仕事と時間は変わる。本業と休息を削って継続できなければ、短期の収入より大きな負担になる。副業しない選択も含め、目的と上限時間を先に決めたい。
企業は副業希望者の数より、制度を使える条件を測る
採用広報で“副業可”を掲げる企業は、許可件数、申請から回答までの日数、不許可理由、利用者の職種を確認する。制度があっても一件も使われていなければ、魅力として機能しているとは言いにくい。利用しない人へ理由を聞き、時間、手続き、評価の不安を分ける。
副業を人材育成に使うなら、得たスキルを本業へどう戻すかを対話する。ただし、成果の提供を強制すると個人活動の自由が失われる。利益相反と情報管理の最低条件を定め、それ以外は本人の目的を尊重する。管理項目を増やしすぎると申請だけで疲れる。
27.6%という数字は、働く人が副業を不要と判断した証明ではなく、一つの設問への回答である。自社の人材施策では、希望、実施、継続、負担、学びを別々に測る。全国調査の傾向を、目の前の従業員の答えの代わりにしないことが重要だ。
「副業意向 27.6%」を調べるときに確認したいこと
検索結果を読むときは、まず「副業意向 27.6%」に関する情報を、誰が、いつ、どの条件で公表したのか確認したい。本稿では日本生産性本部 第19回 働く人の意識調査、日本生産性本部 第18回 働く人の意識調査、日本生産性本部 第2回 働く人の意識調査を照合した。企業の公式発表は企画内容や提供条件を確かめる一次情報になる一方、自社の施策を説明する資料でもある。魅力的な表現を、そのまま第三者による効果検証と読み替えない。
次に、数字の分母、対象期間、対象地域、比較相手をそろえる。発表資料に人数や割合があっても、購入者全体なのか調査回答者なのか、単月なのか累計なのかで意味は変わる。記事やSNSで短く引用される過程では、但し書きが落ちやすい。元ページの表題だけでなく、調査概要、注記、利用条件まで戻り、公開されていない成果は「不明」と残す。
施策の流れは「2020年40.2% → 2026年27.6% → 理由は別途検証」と整理できる。ただし、前の段階の人数が多ければ、後の段階も成功したとは限らない。認知、参加、利用、継続、売上、ブランド想起は別の指標である。自社で参考にするときは、どの一段を改善したいのかを決め、その前後だけでも計測する。ニュースの話題量を事業成果の代用にしない。
最後に、2026年9月8日時点の公開情報であることを意識したい。期間限定企画は終了し、商品、料金、対象店舗、ランキング、調査結果は後から更新される場合がある。実際に参加・購入・契約する際は公式の最新案内を確認する。企画分析として読む場合は、当時公表された事実、そこから導く解釈、まだ測られていない効果を三つに分けると、表面的な成功事例の模倣を避けられる。
- 確認できた事実:公式資料に日時、条件、対象、数字が明記されている
- 本稿の解釈:確認できた事実から、体験や事業の仕組みを読み解いている
- まだ分からないこと:売上、継続率、因果関係など、公開資料だけでは判断できない
- 実務での次の一手:自社の顧客と目的を決め、小さな検証で差を確かめる
この事例を、単発の話題づくりではなく継続的なブランド接点として考えるなら、AIでライターの仕事はどう変わるかとAI企業に編集者が必要な理由もあわせて読むと、判断の軸を置きやすい。
副業意向27.6%は、現在していないが将来してみたい雇用者の割合であり、副業実施者の比率ではない。2020年から12.6ポイント下がった一方、直近半年では否定的回答が減っている。テレワーク低下との因果も未確定だ。企業は“副業可”の看板だけでなく、時間、申請、評価、情報管理の摩擦を測り、個人は目的と継続可能な上限から判断する必要がある。
Sources / 参考資料
