見逃した番組を見るとき、スマートフォンではなく、ネットにつないだテレビでTVerを開く。そうした視聴が若い層で増えている。

TVerは2026年9月8日、8月のテレビデバイス再生数が月間2.3億回となり、過去最高を更新したと発表した。20〜34歳に限ると前年同月の238%だった。ネット動画を若者の個人画面だけで考えると、届け方も測り方も実態からずれる可能性がある。

用語メモ

  • コネクテッドTV:インターネットにつながり、動画配信サービスを見られるテレビ。外付けの配信機器を使う場合も含む。
  • VOD:見たい動画を選び、好きな時に再生する視聴方法。見逃し配信もこの一種である。
  • 再生数:動画が再生された回数。何人が見たかを直接表す数字ではない。
  • 共視聴:同じテレビ画面を家族など複数人で一緒に見ること。

TVerのテレビ再生は2.3億回、20〜34歳で前年同月の238%だった

2.3億回は、TVerだけで配信したVOD、リアルタイム配信、追っかけ再生、特別番組のライブ配信をテレビデバイスで再生した合計である。利用者数ではない。2024年8月はパリ五輪の開催月だったが、2026年8月はその147%だったとTVerは説明する。

20〜34歳の238%も人数ではなく、テレビデバイスでの再生回数の比較である。前年に何人が見たか、同じ人が何回再生したかは発表から分からない。それでも、若い層のネット動画を「移動中にスマホで一人で見るもの」だけに置けない変化は確認できる。

別の調査では、2024年6〜8月のTVerのVOD再生に占める端末別の割合は、スマートフォン54%、コネクテッドTV36%、パソコン10%だった。今回、TVerはテレビデバイスが約4割を占めるとする。ただし、前者はVODに限った3か月、後者は詳しい集計条件が公表文にない。36%から4ポイント増えたとは断定できない。

再生回数だけでは、画面の前にいる人数まで分からない

テレビ画面には、スマートフォンと違う数えにくさがある。一つの再生を二人以上で見ることがあるからだ。TVerが2024年に公表した調査では、テレビアプリで1番組を見る平均人数は1.7人だった。ただし、回答者は15〜69歳の212人で、2024年1月の自社委託調査である。現在の20〜34歳を直接示す数字ではない。

米国の広告業界団体IABも、コネクテッドTVでは画面の前に何人いるかを正確に知るのが難しいと説明する。テレビが消えているのに配信が続く場合など、再生と人の注意が一致しない問題もある。2.3億回を、そのまま2.3億人や広告を見た人数として扱うことはできない。

この課題に対し、TVerはビデオリサーチと共同でTVer DATA MARKETINGを2024年7月に設立した。放送と配信の視聴データを整え、広告計測を強めるための会社である。再生数が増えるほど、端末を数えるだけでなく、重複や共視聴を含めて人へ近づける測定が必要になる。

リテールメディアをテレビCMと同じ指標で買う動きでも、異なる媒体を同じ言葉で比べる前に、数字のつくり方をそろえる必要があった。TVerでも、再生、端末、世帯、視聴人数を分けて読むことが広告判断の出発点になる。

テレビと動画の企画を考える3つの学び

1. 年齢だけでなく、見る画面を分けて確かめる

20〜34歳という年齢区分だけでは、移動中のスマホ視聴か、家のテレビ視聴かが見えない。大画面では長い番組や複数人の視聴も起こり得る。動画企画では、年代別の到達だけでなく、端末別の再生、時間帯、番組の種類まで確認したい。

2. 再生回数と視聴人数を同じ数字にしない

一台のテレビを二人で見る場合も、一人が繰り返し見る場合も、再生数だけでは区別できない。広告の報告では、何を一回と数えたか、共視聴をどう推定したかを添える。比較する媒体同士で分母がそろっているかも確かめる必要がある。

3. 配信先より、番組を選ぶ場面から考える

スマホ向けかテレビ向けかを先に決めると、同じ人が場面によって端末を替える動きを落とす。誰が、いつ、どこで、誰と見る番組なのかを先に置く。そのうえで、小さな画面と大きな画面に広告や内容をどう配分するかを決めたい。

Sources / 参考資料