同じ商品を買う人が、広告を見た組と見ていない組でどれだけ違うか。DoorDashは2026年9月2日、自社広告の測り方に対する第三者認証と二つの調査を公表した。

広告の後に売れた商品をすべて成果にすれば、もともと買う予定だった人まで含まれる。今回の変化は、媒体が示す売上から、広告がなければ起きなかった増分を確かめる方向への移行である。

本稿では、DoorDash Adsが広告効果をどう測るのかをたどる。数字が示せる範囲と、広告主が予算を決める前に聞くべきことも整理する。

用語メモ

  • DoorDash Ads:料理や日用品の配達サービスDoorDashに広告を出す仕組み。商品を探し、注文する画面に広告を置く。
  • コマースメディア:買い物の場が売る広告。広告を見た記録と購入記録を近い場所で比べられる。
  • インクリメンタリティ(増分):広告がなければ起きなかった売上や注文の増加分。広告後の売上すべてとは違う。
  • マーケティング・ミックス・モデリング(MMM):広告、価格、季節、天気などが売上へ与えた影響を統計で分ける方法。
  • AAM:広告やメディアの測り方を第三者として検査する米国の団体。今回はDoorDashの増分測定を認証した。

DoorDashは「売れた」と「広告で増えた」を分けた

広告を見た人の売上だけを数えず、見ていない人と比べて増えた分を調べる。これがDoorDash Adsの今回の答えである。

AAMは、DoorDashのスポンサー商品広告とブランド広告を対象に検査した。調べたのは、使うデータ、広告を見た組と見ていない組の作り方、計算、顧客への説明である。認証は、各広告が必ず売上を増やす証明ではない。測り方が業界の指針に沿うかを確かめたものだ。

別の調査では、DoorDashと市場調査会社Circanaが買い物の記録を世帯ごとに比べた。ある飲料会社の広告は8週間で推計620万世帯へ届いた。広告を見た世帯では、店頭売上が1世帯あたり0.59ドル増えたと推計された。Circanaの飲料分野の基準値0.19ドルの約3倍で、合計は約370万ドルだった。

ただし、これは社名を公開していない飲料会社1社の結果である。対象となる広告主も現時点では一部に限られる。DoorDash全体や日本の広告でも同じ差が出るとは言えない。

それでも、ここには大きな違いがある。媒体内で広告後に起きた購入を足すだけではない。店頭で増えた売上まで、対照群と第三者のデータで確かめようとしている。

表示回数より注文件数が売上を安定して説明した

広告効果を計算するとき、すべての媒体へ同じ数字を入れてはいけない。DoorDashとIpsos MMAの共同研究が示したのは、この単純な注意である。

研究は、米国の全国・地域の外食6社を対象にした。2023年7月から2025年6月までを含む週ごとのデータで、注文、広告費、広告経由の売上、クリック、表示回数を比べた。6社すべてで、注文件数がDoorDash広告と売上の関係をもっとも安定して説明した。表示回数とクリックは弱かった。

理由は、広告を見る場面にある。テレビ広告は、知ってから買うまでに時間がかかる。一方、DoorDashでは料理を探している人が、その画面で商品を選び、注文する。研究では、効果の多くが広告を見た週に表れ、翌週に残る割合は6社平均42%と見積もられた。

この42%は観察した売上そのものではなく、統計モデルが置く時間の条件である。長く効果が残ると仮定したモデルより結果に合ったが、6社の外食広告を超えて使える万能値ではない。

研究にも利害関係は残る。Ipsos MMAが方法を作り、分析した一方、DoorDashは広告データと媒体の知識を提供した。広告主の社名や個別結果も公開されていない。

ChatGPT Adsのデータ境界を扱った記事でも、媒体と広告主が見られるデータの差を調べた。今回も、媒体が持つ詳しいデータと、外から確かめられる範囲を分けて見る必要がある。

コマースメディアの効果を見極める3つの学び

1. 広告後の売上と、広告で増えた売上を分ける

広告後に買った人の全員が、広告で動いたわけではない。DoorDashとCircanaは、広告を見た世帯と対照群を比べた。広告主は成果表を受け取ったら、「広告がなかった場合」を何で作ったかを最初に聞きたい。

2. 媒体の数字と第三者の確認を並べる

DoorDashは注文データを持つため、広告と購入を近くで結べる。だが、売る側と測る側が同じでもある。AAMが検査した範囲、Circanaが照合した店頭購入、未公開の条件を並べると、どこまで信じて予算を動かせるかが見える。

3. 媒体ごとに効果が残る時間を変える

外食6社では、DoorDash広告の効果は主に見た週へ集まった。テレビと同じ長い効果を仮定すれば、広告の貢献を見誤る。担当者は、生活者が広告を見てから買うまでの時間を確かめ、媒体ごとに計算条件を変えるべきである。

コマースメディアは、購入の近くにいるから効果を測りやすい。だからこそ、自社の注文記録だけで結論を閉じないことが大切だ。次の予算会議では、クリック率より先に、対照群、第三者確認、効果が残る期間の三つを確かめたい。

Sources / 参考資料