高校生のほとんどに“推し”がいて、半数以上は日本のアイドルを応援している。そんな見出しを見れば、若者向け施策はアイドルと組めばよいと思うかもしれない。アイ・エヌ・ジーの渋谷トレンドリサーチは2026年8月、関東の高校生男女100人を対象に推し活調査を発表した。

100人のうち89%が“推しがいる”と回答し、推しのいる回答者による複数回答で、日本のアイドルが51.7%、韓国のアイドルが30.3%、キャラクターが18.0%だった。 一人が複数ジャンルを選べるため、合計は100%にならない。

この調査は、流行に敏感な関東の高校生の兆しを見るためのもので、日本全国の高校生を人口比で代表する大規模調査ではない。小さな調査を無価値とせず、どこまで一般化できるかを区切ることが重要だ。数字から推し活マーケティングへ進む前に、母数と質問を読む。

調査対象は関東の高校生男女100人、推しジャンルは複数回答

公式発表によると、調査は渋谷を拠点とするINGteensの高校生メンバーなど、流行に関心のある関東の高校生男女100人を対象とした。調査期間、年齢条件、方法はリリースの概要で確認できる。標本数100は一人の回答が1ポイント相当になる。

“推しはいるか”は単一回答で、いる89.0%、いない11.0%。続く推しジャンルは複数回答可で、日本のアイドル51.7%、韓国のアイドル30.3%、キャラクター18.0%、バンド・アーティストとアニメ・漫画キャラクターが各15.7%だった。

51.7%の分母は、リリースの表示上、推しがいる回答者によるジャンル回答として読む必要がある。100人全員の51.7人という単純換算ではない。複数回答なので、日本のアイドルを選んだ人が韓国アイドルやキャラクターも同時に選んでいる可能性がある。

“高校生全体”ではなく、トレンド感度の高い層の兆しとして使う

渋谷トレンドリサーチは、若者の変化を早く捉える目的を持つ。関東、登録メンバー、流行への関心という条件は、全国平均からの偏りになる一方、新しい兆しを見つけるには意味がある。調査目的に合う標本かを考える。

全国の高校生の推し保有率を精密に推定するなら、地域、学年、性別、学校種別を分け、より大きな無作為標本が必要になる。今回の89%を全国人口へ掛け合わせ、“高校生の何百万人”と推計することはできない。

他の調査と比べる場合も、推しの定義と選択肢をそろえる。タニタの2026年調査は1,000人を対象に最推しジャンルを聞き、全年代の結果を示す。質問が“推しがいるか”“複数のジャンル”“最推し一つ”では、同じアイドル比率でも意味が異なる。

  • 分母:関東の高校生男女100人
  • 推しの有無:いる89.0%、いない11.0%
  • ジャンル:推しのいる人が複数回答できる
  • 使える範囲:若者トレンドの兆し。全国推計には使わない
関東の高校生100人に聞き、89人が推し有りと答え、その人たちが複数ジャンルを回答した調査の流れ
51.7%は複数回答。全高校生の単一選択ではない。Diagram: CONTEXT編集部

日本のアイドル1位から分かるのは、単一の大衆人気ではなく選択肢の広がり

公式発表は、日本のアイドルの中でも大手事務所からインディーズまで対象が細分化していると説明する。51.7%というまとまりの中に、異なる性別、規模、活動場所、ファン文化がある。“日本のアイドル好き”を一つの人物像にしない。

韓国アイドル、キャラクター、バンド、アニメなどが同時に選ばれることも、推しが一人に固定されないことを示す。企業がコラボを考えるなら、ジャンル順位より、応援する行動、使う時間、購入場所、共有方法を知る必要がある。

推し活は公式グッズ購入だけでなく、イベント参加、動画視聴、創作、友人との会話など複数の支出と行動を含む。財務省の広報資料も、公式消費、自主消費、付随消費、コラボ消費のように多層で捉えている。推しの存在を、すべて購買意欲へ短絡させない。

若者施策では、推しを借りる前にファンの参加ルールを知る

人気者を広告に起用すれば、認知は得やすい。しかしファンは、ブランドが人物をどう扱うか、公式設定や活動を理解しているかを細かく見る。名前と画像を置くだけでは、関心を利用したように見える。本人・権利者との合意と、ファン文化への理解が必要だ。

企画では、買わなくても参加できる入口、転売を抑える数量設計、地域差への配慮、個人情報の扱いを明示する。高校生が対象なら、支払い能力、保護者同意、深夜イベント、安全にも注意する。熱量の高さを、過度な購入圧力へ変えない。

評価では、販売数だけでなく、新規ファンと既存ファンの満足、コンテンツ理解、批判の理由、長期の好意を見る。100人調査は企画の仮説をつくる出発点になる。最終判断は、自社顧客への追加調査や小規模テストで確かめる。

「高校生 推し 89%」を調べるときに確認したいこと

検索結果を読むときは、まず「高校生 推し 89%」に関する情報を、誰が、いつ、どの条件で公表したのか確認したい。本稿ではアイ・エヌ・ジー 2026年高校生推し活調査、タニタ 推し活に関する意識・実態調査2026、財務省広報誌 推し活の消費構造を照合した。企業の公式発表は企画内容や提供条件を確かめる一次情報になる一方、自社の施策を説明する資料でもある。魅力的な表現を、そのまま第三者による効果検証と読み替えない。

次に、数字の分母、対象期間、対象地域、比較相手をそろえる。発表資料に人数や割合があっても、購入者全体なのか調査回答者なのか、単月なのか累計なのかで意味は変わる。記事やSNSで短く引用される過程では、但し書きが落ちやすい。元ページの表題だけでなく、調査概要、注記、利用条件まで戻り、公開されていない成果は「不明」と残す。

施策の流れは「関東100人 → 推し有り89人 → 複数ジャンル回答」と整理できる。ただし、前の段階の人数が多ければ、後の段階も成功したとは限らない。認知、参加、利用、継続、売上、ブランド想起は別の指標である。自社で参考にするときは、どの一段を改善したいのかを決め、その前後だけでも計測する。ニュースの話題量を事業成果の代用にしない。

最後に、2026年9月8日時点の公開情報であることを意識したい。期間限定企画は終了し、商品、料金、対象店舗、ランキング、調査結果は後から更新される場合がある。実際に参加・購入・契約する際は公式の最新案内を確認する。企画分析として読む場合は、当時公表された事実、そこから導く解釈、まだ測られていない効果を三つに分けると、表面的な成功事例の模倣を避けられる。

  • 確認できた事実:公式資料に日時、条件、対象、数字が明記されている
  • 本稿の解釈:確認できた事実から、体験や事業の仕組みを読み解いている
  • まだ分からないこと:売上、継続率、因果関係など、公開資料だけでは判断できない
  • 実務での次の一手:自社の顧客と目的を決め、小さな検証で差を確かめる

この事例を、単発の話題づくりではなく継続的なブランド接点として考えるなら、ブランドエクイティとは何かブランディングとマーケティングの違いもあわせて読むと、判断の軸を置きやすい。

高校生の89%に推しがいるという結果は、関東の高校生100人への調査である。日本のアイドル51.7%は複数回答で、全国の高校生が一つだけ選んだ割合ではない。トレンドの兆しとして活かしつつ、ジャンル内の細分化、応援行動、支払いと安全を追加で調べる。母数を小さく見せず、大きくも見せないことが若者調査を使う基本である。

Sources / 参考資料