野菜のトレンドと聞くと、新しい品種や珍しい産地を思い浮かべる。しかし、Oisixが2026年8月に発表した「ベジフル ネクストトレンド2027」は、野菜そのものだけでなく、たんぱく質を意識する、包丁を使わない、持ち歩くといった食べ方の変化を捉えている。
発表されたキーワードは、プロテインベジ、メンパベジ、進化系唐辛子、ポータブルベジ、シュウカツベジの五つである。 Oisixは、約35万人の顧客、4,000軒を超える生産者、年間約6万件の商品評価の蓄積を予測の背景として挙げる。
ただし、これは2027年の市場規模を保証する統計ではない。自社顧客の購買と声からつくった事業者の予測であり、全国の生活者を無作為抽出した調査とも異なる。五つの意味を確認し、どのように商品企画へ使い、何を追加検証すべきかを整理する。
2027年の5テーマは、栄養・時短・刺激・携帯・記憶を表す
プロテインベジは、たんぱく質を摂る目的で選ぶ野菜や食べ方を指す。豆や野菜を、肉の代替という否定形だけでなく、栄養を積極的に取り入れる選択肢として見せる。筋力づくりに関心がある人だけでなく、普段の食事で何を足せばよいか迷う層へ、用途を明確にする名称である。
メンパベジは、面倒な下ごしらえを省く野菜。洗う、皮をむく、切るといった工程を減らし、開封してすぐ調理または食べられる状態にする。進化系唐辛子は、単に非常に辛い品種を競うのではなく、香り、色、料理との相性まで含む刺激の選択肢を広げる。
ポータブルベジは、外出先でも食べやすい形や包装にする発想である。シュウカツベジは、人生の終わりを準備する一般的な“終活”とは意味が異なり、土地に残る野菜や食文化の記憶を集め、未来へつなぐ活動を指す。五つを一列の流行として扱うより、便利さを求めるテーマと文化を守るテーマが同居している点を見るべきだ。
予測の根拠は大きいが、日本全体の代表値ではない
Oisixは、自社サービスの約35万人の顧客、4,000軒を超える生産者、年間約6万件の商品評価を基にしていると説明する。実際の購買行動と、食べた後の評価を同時に見られることは強みだ。アンケートで“欲しい”と答えた人が、実際に代金を払うかという差を小さくできる。
一方、Oisixの利用者は、食品宅配に登録し、一定の価格や配送条件を受け入れた人である。店頭中心の買い物をする人、配送対象外の地域、サービスを知らない人を均等に代表しない。顧客数が多いことと、全国人口にそのまま一般化できることは別だ。
また、年間6万件という評価の母数は、評価した人数、商品数、複数回答の扱いで意味が変わる。公式発表は予測に使った分析手法や各テーマの支持率をすべて開示していない。マーケターが使う場合は、魅力的な名称を市場の確定事実にせず、自社顧客に同じ需要があるかを確かめる仮説として扱う。
- 強み:購入データと、食べた後の評価を結び付けられる
- 偏り:食品宅配を利用する顧客の条件が反映される
- 不明点:各テーマの支持率や抽出方法は詳しく公開されていない
- 使い方:名称をコピーせず、自社の売り場で小さく検証する

注目点は、新しい野菜より“選ぶ理由”を短くしたこと
売り場で野菜を選ぶ理由は、価格、鮮度、産地だけではない。今日は切る時間がない、間食でも栄養を取りたい、いつもの料理に刺激を足したい。五つのキーワードは、こうした利用場面を短い名前にする。品種の説明より先に、生活者が得る便益を伝えられる。
とりわけメンパベジとポータブルベジは、野菜を食べたい気持ちと調理の手間の間を埋める。便利にすると価格や包装が増えるため、誰にでも良いとは限らない。家庭の包丁作業を減らす代わりに、工場での加工、低温物流、廃棄、容器回収まで含めて価値を考える必要がある。
シュウカツベジは効率とは反対方向を向く。希少な在来種や地域の食べ方は、大量流通だけでは残りにくい。少量でも買い手と生産者をつなぎ、種や調理法の記録を残すことが価値になる。トレンド予測の中に保存活動を入れたことで、未来の食卓を“売れ筋”だけで定義しなかった。
商品企画では、一つの仮説を価格と継続率で確かめる
五つのテーマを一度に盛り込むと、商品が何のためか分からなくなる。まず、誰のどの場面を変えるかを一つ選ぶ。メンパベジなら平日夕食の下ごしらえ時間、ポータブルベジなら午後の間食、進化系唐辛子なら料理別の香りの選択というように、使用前後の差を観察できる形にする。
検証では、初回購入だけでなく再購入を見る。便利さで一度試しても、価格、量、味、保存期間が日常に合わなければ続かない。加工度を上げた商品の場合は、通常の野菜との差額をいくらまで受け入れるか、余らせず使い切れるか、容器への抵抗がないかも確認する。
予測を広告の権威として借りるだけでは、自社の顧客理解は深まらない。Oisixのデータが示す兆しを、自社の店舗、EC、試食、定性インタビューで確かめる。結果が違えば、その差が顧客特性である。トレンドは当てる対象というより、早く問いを立てるための材料として使うと実務に落ちる。
「ベジフル ネクストトレンド 2027」を調べるときに確認したいこと
検索結果を読むときは、まず「ベジフル ネクストトレンド 2027」に関する情報を、誰が、いつ、どの条件で公表したのか確認したい。本稿ではオイシックス・ラ・大地『ベジフル ネクストトレンド2027』発表、Oisix ベジフル ネクストトレンド2027特設ページ、Oisix ベジフル ネクストトレンド2026特設ページを照合した。企業の公式発表は企画内容や提供条件を確かめる一次情報になる一方、自社の施策を説明する資料でもある。魅力的な表現を、そのまま第三者による効果検証と読み替えない。
次に、数字の分母、対象期間、対象地域、比較相手をそろえる。発表資料に人数や割合があっても、購入者全体なのか調査回答者なのか、単月なのか累計なのかで意味は変わる。記事やSNSで短く引用される過程では、但し書きが落ちやすい。元ページの表題だけでなく、調査概要、注記、利用条件まで戻り、公開されていない成果は「不明」と残す。
施策の流れは「購買と声 → 5テーマを予測 → 商品で検証」と整理できる。ただし、前の段階の人数が多ければ、後の段階も成功したとは限らない。認知、参加、利用、継続、売上、ブランド想起は別の指標である。自社で参考にするときは、どの一段を改善したいのかを決め、その前後だけでも計測する。ニュースの話題量を事業成果の代用にしない。
最後に、2026年9月8日時点の公開情報であることを意識したい。期間限定企画は終了し、商品、料金、対象店舗、ランキング、調査結果は後から更新される場合がある。実際に参加・購入・契約する際は公式の最新案内を確認する。企画分析として読む場合は、当時公表された事実、そこから導く解釈、まだ測られていない効果を三つに分けると、表面的な成功事例の模倣を避けられる。
- 確認できた事実:公式資料に日時、条件、対象、数字が明記されている
- 本稿の解釈:確認できた事実から、体験や事業の仕組みを読み解いている
- まだ分からないこと:売上、継続率、因果関係など、公開資料だけでは判断できない
- 実務での次の一手:自社の顧客と目的を決め、小さな検証で差を確かめる
この事例を、単発の話題づくりではなく継続的なブランド接点として考えるなら、カルビー「栗あとミルク」に見る次の定番づくりとブランドポジショニングの決め方もあわせて読むと、判断の軸を置きやすい。
ベジフル ネクストトレンド2027は、野菜の新品種ランキングではなく、栄養、時短、刺激、携帯、文化継承という五つの食べる理由を示した予測だ。35万人規模の顧客データは有力な兆しだが、日本全体の確定値ではない。自社の顧客と売り場で小さく試し、価格と継続利用まで確かめることで初めて商品戦略になる。
Sources / 参考資料
