AI検索に引用されるには、比較記事やおすすめ記事を増やせばよい。そんな提案を見たとき、根拠として示されそうな数字がある。AI検索対策エージェント「Brand UP」の調査では、比較・おすすめ・選び方に関するページが、調査対象の引用ページの32.7%を占めた。

3分の1は小さくない。だが、ここから「残り67.3%は公式サイト」「比較記事では3分の2を逃す」とは言えない。公開資料には、残りの内訳が示されていないからである。

AI検索の調査数字は、割合より先に、どんな質問をし、何を分類し、何を分母にしたかを読む。 別の調査には、比較検討系のタイトルが85.1%だったという結果もある。32.7%と85.1%は矛盾ではない。測っている対象が違う。

32.7%は、4つのAIで集めた48万4537件から出た

AI Search Cited Award 2026 下期は、ChatGPT、Gemini、Google AI Overviews、Google AI Modeの4プラットフォームを対象にした。21部門、122カテゴリで、各カテゴリ90問を使い、2026年2月から7月まで計測した。公開資料が「引用件数」と呼ぶ総数は484,537件である。

部門ごとの1位は20サイトに分かれ、2部門で1位になったのはASPICだけだった。1位サイトのスコアも、リユース・買取部門の「おいくら」63.8%から、旅行・店舗・グルメ部門のYahoo! JAPAN 15.6%まで開く。少なくとも、全分野を一つの勝ち型で説明できる結果ではない。

公開ページは、質問の具体性による差も説明する。「おすすめ」「比較」「選び方」のように候補を広く尋ねると比較サイトや紹介記事が目立ち、料金、機能、導入条件まで具体化すると事業会社のサービスページや公式情報も参照されるという。つまり引用元は、サイトの種類だけでなく、検討のどの段階を質問したかで変わる。

この構造は、AI検索の基本で扱った「質問を分解して複数の情報源から答えを組み立てる」性質ともつながる。候補を並べるページと、条件を確定する一次情報は競合するだけではない。同じ回答の異なる部分を担う可能性がある。

残り67.3%の正体は、公開資料だけでは分からない

32.7を100から引けば67.3になる。分かるのは、比較・おすすめ・選び方に関するページへ分類されなかった割合までだ。その中に公式サイト、自治体、動画、ニュース、口コミ、ECの商品ページが何%ずつあるのかは、公開された全体ページとリリースには載っていない。

「料金や機能を尋ねると公式情報も参照される」という記述は、公式ページが残り67.3%の全部または最大部分だという意味ではない。事例があることと、構成比が分かることは別である。内訳の表がない以上、残りを都合のよいコンテンツ種別へ割り当ててはいけない。

再現性を考えると、さらに確認したい情報がある。90問の全文、122カテゴリの選定基準、同じURLをどう重複処理したか、4プラットフォームを同じ重みで合算したか、回答のどの位置を引用として数えたかである。公開資料からは、そのすべてを追えない。これは調査が無効という指摘ではなく、32.7%から言える範囲を定めるための留保だ。

調査主体のWanokuniはBrand UPを提供し、その技術基盤を使って引用状況を分析している。受賞サイトはバッジを営業資料などに使え、ページ末には無料トライアルへの案内もある。事業者の調査には現場データという強みがある一方、サービスの必要性を説明する商業的な文脈もある。出典名と調査設計を併記して読むのがよい。

85.1%と並べると、分母の違いが見える

Optyino.aiが2026年7月に公表した別調査では、商品レコメンドに関するAI回答18,218件から延べ167,913件の引用URLを抽出した。同一回答内の重複を除くと156,957件。そのうち、ドメイン名だけで記事タイトルを分析できないものなどを外し、116,395件のタイトルを分類した。

比較検討系とされたのは、タイトルに「おすすめ」「比較」「ランキング」「口コミ・評判」「最新・年号」「選び方」「価格・安さ」のいずれかを含むものだ。該当率が85.1%だった。これは本文を読んで比較記事か判断した割合ではなく、あらかじめ決めた語をタイトルに含むかという分類である。

質問も違う。「おすすめの洗濯機」「おすすめのポータブル電源」など、18種類以上の商品カテゴリで推薦を求めるプロンプトが中心だ。調査元自身も、対象プロンプトに「おすすめ」が含まれるため、比較検討系タイトルが多くなるのは自然だと注記している。広い検討段階を含む122カテゴリの調査と、商品おすすめ場面へ絞った調査を、割合だけで競わせることはできない。

AI検索引用の32.7%と85.1%について、質問、分類方法、分母が異なることを上下に示した比較図
二つの数字は、質問、分類単位、分母が違う。大小だけで結論を比べることはできない。Diagram: CONTEXT編集部(Brand UP、Optyino.aiの公開資料を基に作成)

ここでの教訓は、調査を一つに決めることではない。自社が知りたい場面と同じ質問、同じ分類、同じ分母を持つデータを選ぶことである。商品を選ぶ初期段階ならおすすめ系の分析が近い。指名後の料金確認なら公式ページの引用を測る。BtoBなら、業界をまたいだ平均より、自社カテゴリの具体的な質問を優先する。

CONTEXTの既刊でも、生成AI回答の15.05%がプレスリリースを引用したという調査を扱った。そこでも、引用URL全体に占める2.20%と、少なくとも1本を引いた回答の15.05%は同時に成立した。URLを分母にするか、回答を分母にするかで、同じデータの見え方は変わる。

GEO提案書は、数字を5つの欄へ戻して読む

AI検索対策を発注する側は、提案書に大きく置かれた割合を、次の5項目へ戻してみる。どれかが空欄なら、施策の優先順位を決める前に説明を求めたい。

  • 対象:ChatGPT、Gemini、AI Overviewsなど、どの製品・モデルを測ったか
  • 質問:候補探し、比較、料金確認、導入条件など、どの検討段階を再現したか
  • 時点:いつからいつまで測り、モデル更新をまたいでいるか
  • 分母:回答、引用URL、重複除去後URL、タイトル、ドメインのどれか
  • 分類:本文を人が読んだのか、タイトルの語句か、ドメイン単位か。重複分類を許すか

そのうえで、自社の重要質問を20〜50件ほど固定し、各AIで現状を記録する。引用の有無だけでなく、社名が正しいか、価格や条件が古くないか、競合とどう並べられたかを見る。比較記事を増やす前に、AIが答えを誤っている箇所と、根拠が欠けている質問を特定する。

コンテンツの役割も分ける。候補を見渡す比較・選び方記事、条件を確定する公式の料金・機能ページ、導入後を想像できる事例、細かな疑問へ答えるFAQは、同じ検索意図ではない。オウンドメディアをAIが参照するデータソースとして設計するなら、すべてを「おすすめ10選」へ寄せるより、質問ごとに根拠を置く方が管理しやすい。

32.7%が示すのは、比較・おすすめ・選び方ページが無視できないということだ。67.3%の正体まで教えているわけではない。数字を施策へ変える仕事は、残りを想像で埋めることではなく、自社の質問、分類、分母で測り直すことから始まる。

Sources / 参考資料