電通デジタルが2026年7月21日、「次世代オウンドメディア戦略・構築支援」の提供を始めた。発表文は、オウンドメディアの役割を二つに分けて書いている。

一つは「AIが参照する『データソース』としての役割」である。もう一つは「ユーザーを最終コンバージョンまで導く『伴走役』としての役割」だ。

二つは並記されており、どちらかが主でどちらかが従だとは書かれていない。データソースという言い方が先に来ている点だけが目を引く。

読み手は人だけではない。その前提が、支援サービスの説明文そのものに入った。

電通デジタルは電通グループのデジタル領域を担う会社である。その会社が、支援メニューという形でオウンドメディアの定義を書き直した。

支援サービスが置いた二つの役割

メニューは三つに分かれている。オウンドメディアの伴走支援、GEOコンサルティング、AIエージェントの企画・構築である。

三つのうち二つは、人に読ませるための施策ではない。生成AI向けの設計とサイト上の対話機能が、記事制作と同じ列に並んでいる。

GEOは、生成AIの回答の中でどう取り上げられるかを設計する取り組みを指す。検索順位を対象にしてきたSEOに対して、GEOが対象にするのは回答文そのものだ。

注目すべきは順番ではなく、併記されていることだ。同じ一つのサイトに対して、人向けの設計とAI向けの設計が並列に置かれている。

これまでオウンドメディアの目的は、検索から人を集めて態度を変えることだった。入口が検索エンジンで、出口が自社のページだという前提が長く共有されてきた。

その前提が、事業者側の説明から静かに外れつつある。サービスの名前に「次世代」と付いているのは、この一点を指していると読める。

三つめのAIエージェントは、サイトを訪れた人の側に立つ。どの記事を読むべきか、どの商品が条件に合うかを、対話で絞り込む役目である。

自社サイトを表す枠から二本の矢印が伸び、人が読む枠とAIが参照する枠につながる図
同じ自社サイトに、人とAIという二つの読み手が並ぶ。Diagram: CONTEXT(電通デジタルの発表を基に編集部作成)

検索の出口が、ページの外に移っている

サイバーエージェントのGEOラボが2025年12月に公表した調査がある。全国10代から60代の9,278人に、2025年10月7日から8日にかけて聞いたものだ。

検索した後にどのリンクも開かなかった人の割合、いわゆるゼロクリックは全体で63.2%だった。10代は73.6%、20代は66.8%、30代は62.1%である。

全体の6割強が、検索結果の画面から先へ進んでいない。検索は、リンクを選ぶ場から答えを読む場へ寄っている。

若い層ほど、検索結果の画面で用が済んでいる。ページを開かせること自体が、以前より難しくなっている。

9,278人という規模は、この種の調査としては大きい。年代別に分けても、傾向を読める程度の人数が各層に残る。

ただし、AI Overviewが表示された場合に、その中のリンクを開いた人は全体で54.2%いた。要約で終える人と、要約から先へ進む人が半々に近い。

同じ調査は、AI Overviewの表示率そのものが動いていることも記録している。6月の77%をピークに、7月から10月にかけて48%から34%へ下がった。

参照される機会の量は、検索側の仕様変更で上下する。自社で制御できる変数ではない。

だから表示率の上下に一喜一憂しても仕方がない。動くことを前提に、参照されたときに耐える形を整えておくほうが現実的だ。

数字が示しているのは、ページに人が来なくなる未来ではない。経路が一つ増え、その途中に要約という層が挟まったという事実である。

検索から直接届く人と、要約を経て届く人では、来たときの理解度が違う。前者は何も知らずに来るが、後者はすでに概要を読み終えている。

「参照される」とは具体的に何が起きることか

参照とは、生成AIが回答を組み立てるときに自社のページを情報源として使い、多くの場合その出典を示すことを指す。

このとき読まれるのは、ページ全体ではない。質問に答えている一部分である。

つまり評価の単位が、ページから節へ細かくなっている。一本の記事が丸ごと選ばれるのではなく、その中の一節が選ばれる。

だから見出しと本文の対応が緩いページは不利になる。「〜について」とだけ書かれた見出しの下に複数の話題が混ざっていると、切り出せる単位がない。

逆に、一つの問いに一つの節が対応していれば、その節がそのまま引用の単位になる。構造がそのまま、引用のしやすさになる。

見出しに問いを立て、その直後に答えを一文で置く。この形にしておくと、人が読んでも機械が読んでも迷いにくい。

数字と日付と出典が同じ段落の中で揃っていることも効く。要約する側は、確かめられる記述を優先するからだ。

たとえば「先日発表された」と書くか、「2026年7月21日に発表された」と書くかで扱いは変わる。後者はそのまま引用できるが、前者は前後を読まないと日付が確定しない。

プレスリリースの世界では、この差がすでに可視化されている。生成AIが引用したリリースの配信元は、6割がPR TIMESに集中していた(生成AIが引用したプレスリリースの60.5%はPR TIMESだった)。

参照は均等に分散しない。参照しやすい形で置かれているものに寄る。

この偏りは、媒体の規模だけで決まっているわけではない。同じ内容でも、構造化されて置かれているかどうかで拾われ方が変わる。

制作の現場で、変えるものと変えないもの

変えるのは構造である。手を入れる箇所は、それほど多くない。

  • 一つの節で一つの問いだけを扱う
  • 見出しに、答えの側を書く
  • 数字と日付と出典を同じ段落に置く
  • 定義を、記事の早い位置で一文にまとめる

変えないのは、事実の裏取りと文責である。要約する側が確かめるのは記述の確かさであって、書き手の熱量ではない。

文責の所在がはっきりしているページは、参照する側にとっても扱いやすい。誰が書き、いつ更新したのかが分かることが、確かめられる記述の一部になる。

Googleが示している要件も、特別な技術を求めてはいない(LLMOとGoogleのAI検索が求めるもの)。読み手に役立つことと、機械が読み取れることは、ほとんど同じ方向を向いている。

自社の主要なクエリで実際に何が表示されているかは、手元で確かめられる(AI Overviewsとは何か)。表示の有無は月単位で変わるので、一度見て終わりにはできない。

電通デジタルの整理で言えば、「伴走役」の側は消えていない。参照から入ってきた人が最後に判断する場所は、依然として自社のページである。

参照は入口を増やすが、判断まで代わってくれるわけではない。比較や見積もりの段階では、結局その企業のページが開かれる。

参照されるための設計と、読んだ人を動かすための設計は、同じページの上で両立させることになる。片方だけを最適化すると、もう片方が痩せる。

順番としては、既存記事の見出しを見直すところから始めるのが早い。新しく書き足すより、いま持っている資産の切り出しやすさを上げるほうが効く。

二つの読み手のうちどちらを先に想定するか、という問いはあまり生産的ではない。順序ではなく、同じ一つの文章が両方に通じるかどうかが問われている。

Sources / 参考資料