ブロックの突起を指で読む子と、印刷された文字を目で読む家族が、同じ部品で遊ぶ。LEGO Braille Bricks(レゴの点字ブロック)は、点字に対応する突起と印刷文字を一つの部品に載せた教材だ。既存のレゴブロックとも組み合わせられる。1

「みんなで使える」というコンセプトを、どんな仕様やサービスに変えればよいのか。この事例から見えてくるのは、利用者本人に加えて、一緒に使う人の行動を設計する方法だ。同じ目的へ違う読み方で参加できる部品、最初の一歩を支える遊び方、教室や家庭へ届く経路がつながっている。

今回は2020年の教育用プログラムと、2023年の家庭向け発売をたどる。現在の提供条件は地域によって異なる。カバーは2023年のLEGO Group公式提供写真。©2026 The LEGO Group.

同じブロックを二通りで読む

LEGO Braille Bricksでは、点字を読む人と一緒に使う人のために、文字や数字も印刷している。点字をまだ読めない家族や同級生も、どの文字を扱っているのかを目で確かめられる。英国の視覚障害者支援団体RNIBも、触読する子と、見て読む教師・友人・家族が一緒に使うための仕様として説明している。2

点字を表す突起と印刷文字のある緑色のレゴブロックを手に持つ
突起と印刷文字を一つの部品に載せたブロック。2020年の教育用プログラム発表時の提供写真。 — 出典:LEGO Group公式発表。©2026 The LEGO Group. 編集記事への利用許諾に基づく。

読む方法が違っても、扱うものは共通している。同じブロックの文字を確かめ、並べ替え、相手に伝えられる。点字を使う子だけが別の道具へ移る場面を減らし、周囲もその場に参加できる。これは、製品の仕様から読み取れる編集部の分析であり、参加の頻度や学習効果を測った結果ではない。

この構想には、視覚障害者の団体からの提案がある。2020年の発表によれば、デンマークの盲人団体が2011年に、ブラジルのDorina Nowill財団が2017年に提案した。その後、各国の視覚障害者のコミュニティと協力し、約2年にわたる二段階の試験で形を整えている。1

RNIBは英国で学校や専門職と試験した経緯を説明し、色の組み合わせもコントラストを考えて選んだとしている。形状を触って読むことと、色や文字を見て使うことを、同じ製品の中で扱っているのだ。2

公式が掲げるのは「learning through play」、遊びを通じた学びである。ここまでの選択を「読み方が違っても、同じ遊びに参加できる」とまとめることもできる。ただし、後者はCONTEXT編集部の要約であり、公式コピーの引用ではない。レゴが持つ組み立てて遊ぶ仕組みを、点字を読む場面へどうつなぐかが、この事例固有の仕事である。

触って遊ぶ入口をつくる

LEGO Braille Bricksの関連教材サイトには、文字を読む前に、突起と底の穴を触り分け、ブロックの向きを確かめる遊びが用意されている。読み書きの前に、道具を自分で扱う入口をつくっている。

例えば「Save the Turtles」では、ブロックをカメに見立て、突起が上を向くように返す。大人は10個のブロックを用意し、始める前に上下の違いを触って確かめる方法を説明する。教材の狙いは、想像しながらブロックの触覚的な特徴に慣れることだ。3

二人の子どもが机に並び、基礎板の上のレゴ点字ブロックに触れている
同じブロックを使う子どもたち。2020年の公式提供写真で、本文で説明する特定のゲームの実施場面を示すものではない。 — 出典:LEGO Group公式発表。©2026 The LEGO Group. 編集記事への利用許諾に基づく。

数字を扱う段階には「Battle of Numbers」がある。二人がそれぞれ6個のブロックを持ち、上から一つずつ取り出して数字を声に出す。大きな数字を出した側がその回のブロックを取る。大人が事前に数符を示すブロックを置くなど、数字として読むための準備も手順に含まれる。4

勝敗を決めるのは数字の大小であり、指で読んだか、目で読んだかではない。参加者が共有するルールと、情報を得る方法を分けた設計として読める。一方で、数字の読み方を知ること、向きを確かめること、必要な説明を受けることは残る。「同じ部品があれば誰でもすぐ遊べる」と言い換えると、準備する大人の仕事が見えなくなる。

ブランド担当者が参考にできるのは、機能を足した後の最初の行動まで決めることだ。使う人は何に触れ、何を確かめ、相手にどう伝えるのか。その途中で必要な説明を誰が担うかまで追うと、「一緒に使える」という言葉の不足が見えてくる。

教室と家庭へ届ける

LEGO Braille Bricksは、届け先に合わせて提供の仕方も変えている。2020年のプログラムは対象となる学校や教育機関などへ無償で配布し、各国のパートナーが配布、教材の現地化、研修を支える方式だった。1

2023年には、レゴグループが家庭向けの「Play with Braille」を発売した。発表時の英語版・フランス語版は6歳以上を対象とし、発売日は同年9月1日、米国での価格は89.99ドル。287個のブロックと2枚の基礎板を含み、箱にも点字を付けた。遊び始めるための案内も提供した。これは当時の家庭向けセットの条件であり、現在の価格や日本での販売条件ではない。5

箱の点字に触れる子とタブレットの遊びの案内画面を見る子。机に色の違う点字ブロックが並ぶ
点字を付けた箱と、画面の遊びの案内を組み合わせた家庭向けセット。2023年の公式提供写真。 — 出典:LEGO Group公式発表。©2026 The LEGO Group. 編集記事への利用許諾に基づく。

家庭向けセットでは箱を確かめるところから遊びを始めるところまで、複数の接点を整えている。発表で担当デザイナーは子どもや家族、専門家と開発し、色、パッケージ、デジタル体験についてパートナーの助言を受けたと説明した。5

ただし、家庭が購入費を負担することと、教育機関への無償配布は同じ条件ではない。2026年10月28日に確認したRNIBの英国向け案内には、一度限りの寄贈による無償配布分はすべて終了したとある。追加分が必要な学校には公式販売サイトを案内している。無償配布の開始時の説明だけでは今も必要な人へ届くかは判断できない。2

コンセプトの提供条件には価格だけでなく購入や配布を申し込める相手、使う言語、支援を受けられる場所も含まれる。言葉や形が一貫していても、届く経路が途切れれば、同じ体験を約束するのは難しくなる。

一緒に参加できる条件を確かめる

LEGO Braille Bricksから学べるのは、参加者全員に同じ能力を求めず、同じ行為を共有できる接点をつくる考え方だ。突起と文字、準備を伴う遊び、教室と家庭への届け方が、その考え方を具体化している。

それでも道具だけで参加が完成するわけではない。関連教材サイトの包摂的な教室についての説明には、現実的な目標、教師への助言や研修、隣で必要なことを伝える支援が登場する。ブロックの仕様に加えて、場を支える人の働きがある。6

今回読んだ企業発表、開発パートナーの案内、活動手順から確認できるのは、製品と運用上の選択だ。点字の習得がどれだけ速くなったか、長期の参加が増えたかを、この資料だけで結論づけることはできない。新しい玩具への関心や、教師・家族の支援も、遊ぶ様子を説明する別の条件になる。販売された事実と、教育効果が確かめられたことは分けて考えたい。

自社で応用するなら、最初に「誰と誰が、何を一緒にしたいのか」を一場面に絞る。そのうえで、方法を揃えなくても共有できる行動と、必要な支援を分けて試す。例えば、次の問いを仕様案と試行の記録に対応させられる。

一緒に参加できる条件を確かめる
設計する対象企画で決めること試して確かめること
一緒に使う道具異なる読み方や操作方法で確かめられる情報相手に毎回代読・代行してもらわずにできる動作
最初の行動準備する人、説明する人、参加者が行うこと説明が必要になった箇所と、支援者の手間
届く条件価格、対象、言語、配布・購入の経路想定した人が入手し、使い始められるか

この事例の形をそのまま移せるわけではない。既存ブロックとの互換性や、点字教育の専門家との開発関係は、レゴ側にある条件だ。別の商品では、道具を共通にすること自体が合わない場合もある。移せるのは、利用者本人と周囲の人の動作を並べ、道具、始め方、提供条件が同じ約束を支えるか確かめる手順である。

コンセプトを選択の基準として考えるには「ブランドコンセプトとは」、売った後の提供条件まで約束を追うにはFairphoneの事例も参照できる。「一緒に使える」と言う前に、誰がどの方法で参加し、誰にどんな負担が残るかを書き出したい。その具体から、コンセプトの言葉を決めていける。

Sources / 参考資料