IAB Tech Labは2026年9月22日、AIが広告枠を探し、比べ、買うための規格「AAMP 3.0」を発表した。中心は「OpenProposal」である。媒体社の提案を、AIが読める条件へ分ける。意外なのは、AIの判断を自由にする規格ではない点だ。価格や配信先を「どこまで変えてよいか」を、売り手が先に区切る。広告AIの実装は、モデル選びより提案書と承認線の設計から始まる。
用語メモ
- IAB Tech Lab:デジタル広告の技術規格をつくる業界団体。
- AAMP:広告の買い手と売り手のAIを、既存の広告システムへつなぐ規格群。
- OpenProposal:広告商品、価格、配信条件、測定方法などをAIが読める形で表す公開草案。
- RFP:広告主や代理店が、媒体社へ条件と提案を求める依頼書。
OpenProposalは、広告商品をAIが比較できる条件へ分解する
広告枠を買う前には、媒体資料を集め、RFPを送り、提案を比べる仕事がある。価格だけでは決まらない。対象者、掲載場所、動画や音声の形式、配信期間、測定方法、未達時の対応まで確認する。IAB Tech Labは、この発注前の工程がメールや資料、人のやり取りに残っていたと説明する。
OpenProposalは、提案を「AIが読める商品棚」へ変える。売り手は公開商品を並べ、買い手のAIは広告主の条件に照らして候補を探す。必要なら個別提案を求め、合意後は既存の広告配信規格へ渡す。発見から比較、交渉、購入、報告までを、同じ提案の識別情報でつなぐ設計である。
ただし、AIが勝手に値段や条件を変えるわけではない。草案は各項目へ、変更不可、売り手が設定、買い手が選択、範囲内で入力、売り手の承認が必要、といった印を付ける。たとえば、用意された動画形式を選ぶ操作は自動化できる。一方、素材の締切を延ばす依頼や、保証値を上げる要求には売り手の返答が要る。
変化の中心は、交渉を消すことではない。人がその都度判断していた範囲を、機械が選べる条件と、人へ戻す条件に分けることだ。ChatGPT Adsが会話の文脈から広告を選ぶ仕組みは、接触の入口を変えた。OpenProposalは広告を出す側の発注工程を変える。
AAMP 3.0は公開草案で、実運用はまだAAMP 2.3に残る
AAMP 3.0は完成規格ではない。IAB Tech Labの仕様書は、批准済みの標準として扱わないよう明記する。7件の未解決問題も公開した。動画の視聴完了率と屋外広告の推計値をどう比べるか。音声、テレビ、屋外広告の形式登録が足りないとき、AIはどう扱うか。媒体社の実データで確かめる段階である。
IAB Australiaも、売り手側の実証をAAMP 2.3と既存の参照ソフトに固定した。3.0はコメント中で、実証の必須条件ではない。新しい草案を、本番の広告費へすぐ接続しない判断だ。AI導入では、発表された最新版と、実際に試せる版を分けて見なければならない。
公開手続きにも不一致が残る。発表は2026年10月22日まで意見を募るとする。一方、9月23日の確認時点でGitHubには、日付と審査主体が未記入の箇所があり、ライセンスも「未設定」と表示される。中心的な仕様は読めるが、実装、転載、正式な意見提出の前には更新確認が必要である。
広告とAIの判断力を育む3つの学び
1. 自動化の前に、変えてよい範囲を決める
OpenProposalは、形式や対象を選べる条件と、相手の承認が要る条件を分けた。自社の広告運用でも、AIに任せる作業名だけを決めてはいけない。予算、配信先、表現、停止条件ごとに「選べる範囲」と「人へ戻す線」を書く。
2. 媒体資料を、説明文と取引条件に分ける
草案では、商品の魅力を伝える説明と、価格、在庫、測定、キャンセル条件を別の項目で持つ。媒体社は、人に伝わる企画意図を残しながら、AIが比較する条件を構造化できる。まず、提案書のどの数字が更新されても追えるかを確かめたい。
3. 最新版より、検証できる版を選ぶ
オーストラリアの実証は3.0の発表後も2.3を使う。新しさより、動く参照実装と承認手順を優先したためだ。DoorDashは広告効果を第三者監査した。AI広告も機能名ではなく、再現できる入力、判断履歴、停止方法で選ぶ必要がある。
Sources / 参考資料
IAB Tech Lab GitHub:IAB Tech Lab GitHub:OpenProposal 3.0仕様草案
IAB Tech Lab GitHub:IAB Tech Lab GitHub:OpenProposalの未解決問題
IAB Tech Lab GitHub:IAB Tech Lab GitHub:公開コメント手続き
IAB Tech Lab GitHub:IAB Tech Lab GitHub:OpenProposalリポジトリのライセンス表示
IAB Australia:IAB Australia:AAMP売り手側実証の対象とバージョン
IAB Tech Lab:IAB Tech Lab:AAMP 2.3の実装範囲
