英国の小売3社とOxfamは2026年9月23日、繊維循環の共同実証「The Circuit」を発表した。小売3社はM&S、New Look、Sainsbury’sである。対象は、寄付や回収に出されたものの、もう一度は着られない衣料だ。素材を判別し、付属品を外し、再生工場が使える形へそろえる。回収箱を増やすだけでは循環しない。足りなかったのは、古着を原料へ変える中間工程だった。

用語メモ

  • The Circuit:小売、慈善団体、選別会社、再生事業者などが参加する英国の繊維循環実証。
  • 繊維to繊維:不要な衣料などから繊維を取り出し、新しい衣料の原料へ戻すこと。
  • ATSP:衣料の素材判別、付属品除去、裁断などを自動化する設備。

着られない衣料を、再生工場が使える原料へそろえる

実証は2027年1月、Oxfamが英バットリーで運営する選別施設から始まる。Oxfamは集まった衣料を、再使用できるものとできないものに分ける。後者を自動設備へ渡し、繊維の種類を判別する。ボタンやファスナーなどを外し、再生方法に合う大きさへ裁断する。処理量や素材構成も記録し、どこから何が出たかを追えるようにする。

ここで重要なのは、選別の精度だけではない。再生事業者が欲しいのは「古着の山」ではなく、素材と混紡率が分かる原料である。異物が少なく、量と品質が安定している必要もある。運営を担うCircle-8は、こうした原料を大量、継続的、低コストで供給する選別サービスが英国では不足していると説明する。The Circuitは、小売の回収口と再生工場の間に、その共通の受け渡し口を置く試みだ。

競合企業が共有するのは、回収箱ではなく「原料の規格」だ

WRAPの2024年報告によると、英国では2022年に推計145万トンの使用済み繊維製品が発生した。再使用や再生へ回ったのは約65万トンだった。半分近くが一般ごみへ捨てられる一方、集めても素材が混ざったままでは再生先が限られる。回収量と、使える原料の量は同じではない。

そのため、M&SやNew Lookが自社だけで回収を増やしても十分ではない。Oxfam、選別会社、再生事業者、機械メーカーと出口の条件を合わせる意味がある。英国政府の輸出指針も、廃繊維を再生目的で海外へ出す場合、汚れを除き、明確で一貫した仕様へ選別し、その証拠を残すよう求める。素材、異物、記録の共通条件は、環境表現ではなく取引の条件になっている。

ただし、The Circuitは実証前である。処理量、選別精度、費用、実際に新しい衣料へ戻る割合、環境負荷はまだ示されていない。先行したWRAPのACTプロジェクトは、単独施設で年約2万5000トンを扱う案を検討した。一方で、回収制度や拡大生産者責任も必要だと結論づけた。設備一つで循環が完成するわけではない。

衣料の循環を設計するための3つの学び

1. 回収量と、再利用できる原料量を分けて測る

集めた重量だけでは、循環の進み具合は分からない。再使用、素材別の再生、廃棄へ何トン進んだかを分ける。さらに、異物除去後に再生工場が受け取った量まで追えば、回収キャンペーンの効果を過大に見積もらずに済む。

2. 競合と共有するのは、顧客接点より中間工程である

各社は店舗や商品で競争しながら、素材判別、品質表示、追跡方法は共同化できる。Amazonが返品商品を修理・再販する事例でも、価値を戻すには販売前の検品工程が要った。単独では量が足りない工程ほど、共通基盤に向く。

3. 「できる設備」ではなく、出口との契約から始める

選別できても、買い手が求める素材と量に合わなければ在庫になる。再生先の仕様、受入量、価格を先に確かめ、設備を設計する必要がある。WPPが撮影から編集までを一つの拠点へ集めた事例と同じく、価値は機能の数ではなく、次の工程へ確実に渡せるかで決まる。

Sources / 参考資料