バスケットボールができる窪んだコートが、強い雨のときには水をためる場所になる。オランダ・ロッテルダムのBenthemplein(ベンテム広場)は、2013年12月4日に開場した「水の広場」だ。乾いた日には運動や休憩に使い、雨天には周辺から集まる雨水を一時的に受け止める。12

必要なときだけ働く機能を、普段にも役立つ価値へどう結び付けるか。この広場に学べるのは、同じ形を二つの用途に役立て、切替条件と元へ戻す仕事まで決めるコンセプトのつくり方だ。店舗やサービスを企画するときにも、利用者の行動と運営の両方から検討できる。

カバー写真:2017年9月24日撮影。原写真・Cathrotterdam/Wikimedia Commons、CC BY-SA 4.0。

同じ窪みに、二つの役割を与える

ロッテルダム市は、建物や舗装が密集する中心部では、水を受け止める場所を増やしにくいと説明する。一方、ベンテム広場には、近隣の学生から改修してほしいという要望があった。水管理のための空間と、日常を過ごす場所。この二つの課題を、同じ敷地で考えることになった。2

設計したDE URBANISTENが公式に説明するのは、公共空間と雨水貯留を一つの場所に組み合わせる構想である。編集部の言葉で要約するなら、同じ場所の役割を、雨の条件で切り替える。貯水のための窪みが、乾いている間は運動のための床になる。1

広場には三つの槽がある。浅い二つには雨が降ると周囲から水が集まり、深い一つには雨が降り続くと、より広い範囲から水が流れ込む。水管理機関HHSKも、深いスポーツ部分が水で満たされるのは強い雨のときと説明している。雨の条件によって、水をためる部分が異なる。13

周囲より低い位置にあるバスケットボールコートと、その奥に連なる階段状の観覧席
深い槽は乾いたときにはスポーツの場所となる。2017年9月24日撮影。雨天や2026年現在の状態を示す写真ではない。 — 撮影:Cathrotterdam/Wikimedia Commons(原写真)。CC BY-SA 4.0。サイズ・形式のみ変更。

市が示す三つの槽の貯留容量は約170万リットル。これは設備が受け止められる量であり、実際に防いだ浸水被害の量を示す数字ではない。2 コンセプトを評価するときも、「できる仕様」と「使われて得られた成果」は分けて見る必要がある。

雨水をためている間、その面をスポーツに使うことはできない。一つの場所に機能を増やすには、利用できなくなる場面も決める必要がある。「いつでも何でもできる」と約束すると、実際に提供する条件から離れてしまう。

水の行き先を見せる

市の説明によると、周囲の建物の雨樋は、下水へ直接つながる形から、広場の槽へ水を導く形に変えられた。HHSKは雨水をすぐに下水へ送らず、一度受け止めることで下水があふれにくくなると説明する。広場の機能は屋根、溝、槽へと続く経路の中にある。23

その経路には、見た目の区別が付けられている。設計者は、水がたまる面を青の濃淡で塗り、水を運ぶ部分には光るステンレスを使ったと説明している。どこを水が通り、どこにたまるかを、空間の色と材質に対応させた。1

この広場では、水が通る経路そのものを目で追える。機能を説明する情報を、使う場所の形に織り込んだと読める。ただし、見えることによって仕組みの理解や環境意識が高まったかは、今回確認した資料だけでは測れない。

商品の機能やサービスの仕組みを伝える場面でも、「どう説明するか」と同時に「どの動作や形を見れば分かるか」を検討できる。たとえば返却容器を扱う店舗なら、返却口から回収先へ容器が移る関係を、利用者が理解できるかを確かめる。これは編集部の応用例であり、ベンテム広場で検証された販売施策ではない。

雨天の様子や流路の写真は、設計者のプロジェクトページで見られる。本記事の写真は2017年の乾いた状態を示しており、現在の状態や雨天の稼働を現地確認したものではない。

学生の望みと、水管理の投資を重ねる

この使い方は誰のどんな希望から生まれたのか。市によると、もともとは灰色の舗装に覆われた場所で、近隣の学生が改修の可能性を市に尋ねた。それが、市と水管理機関の水の広場をつくりたいという意向に合致した。2

設計者は近隣の学校の学生や教員、住民、周辺施設の関係者とワークショップを行い、使い方や雰囲気、水の見せ方を話し合ったと記している。また、広場の整備は主に水管理部門の資金とイノベーションへの助成で賄われたと説明する。1

利用する学生にとっては、運動したり滞在したりできる場所が欲しい。水管理を担う側には、雨水を一時的に受け止める容量が必要だ。公共空間と貯留を組み合わせる構想は、それぞれの目的を一つの整備に結び付けたと読める。

窪み、段差、水の経路という同じ形がそれぞれの用途にどう役立つかを決めている。企画会議で「防災も交流も」と目的を並べたら、その二つを支える具体物を確かめたい。別々に必要とされる仕事を、同じ設備でどこまで担えるか。コンセプトの核はこの接続にある。

ただし、参加の機会があったことと、全住民が満足したことは同じではない。資金の目的が重なっても、建設費や維持費が安くなるとは限らない。利用者の要望を聞くことに加え、誰が日々の負担を引き受けるかが残る。

「遊べる」に戻す仕事まで設計する

過去のC40 Citiesの事例集は、維持の負担も報告している。ベンテム広場では毎日の清掃に加え、年4回の大がかりな清掃が必要で、年間の維持費は7万5,000ユーロと報告されている。これは同事例集の報告時点の金額であり、2026年の維持費ではない。4

同資料は後続の水の広場で、清掃車が入れるようにしたことや、水が残らないよう傾斜を付けたことも紹介する。さらに、水の広場という方式について、十分な費用対効果分析は行われていないとしている。4

HHSKの説明では、雨天後に水が排出されて槽が乾くと、再び運動や休憩に使える。3 二つの用途を切り替える設計には、次の利用が始まるまでの工程も含まれる。雨が止んだ瞬間に、清掃や確認なしでコートへ戻せるとは読み取れない。

確認できたのは、貯留と日常利用を組み合わせた形、示された容量、当事者が説明する運営上の学びだ。雨水機能によって利用者が増えたか、被害軽減額が維持費を上回るかは確認できていない。近隣の学校や広場の配置も日常利用を説明しうるので、日常利用の理由を一つに決めることはできない。

自社の店舗やサービスへ応用するなら、最初に、設備や場所が使われる時間と空く時間を観察する。次に、別の用途を与えるときの切替条件と、その間に利用できなくなる人を確かめる。そのうえで、元の状態へ戻す作業と費用を企画に含める。

用途を切り替える企画で確かめること
検討する場面企画で決めること試すときに見ること
普段の利用誰が、どの行動に使うか利用回数だけでなく、使わずに帰る理由
用途の切替何を合図に、誰が利用を止めるか案内が伝わるか、代わりの動線があるか
元への復帰誰が片付け、再開を判断するか復帰までの時間、清掃・確認の負担

この表は編集部が事例から組み立てた検討手順だ。ベンテム広場の容量や流路を、そのまま他の土地へ移せるわけではない。必要な貯留量、地形、排水先、公的資金を扱う体制は、この場所の条件に依存する。

共通の約束を接点全体で確かめる考え方はブランド体験の解説で、使い続けるための仕事を商品設計へ含める例はFairphoneの記事で掘り下げている。

ベンテム広場では、同じ窪みがコートと貯水槽になり、水の通り道が見える形になった。自社の企画でも、二つの用途を支える共通の形は何か、切替と復帰を誰が担うかを確かめたい。必要なときに働く機能を普段の価値へ結び付けるには、両方を使える状態に保つ仕事まで決める必要がある。

Sources / 参考資料