ハロウィーンは、仮装した若者や子どもが10月31日に集まる行事。そのイメージだけでは2026年の過ごし方を捉えきれない。米国では、大人が子ども時代を思い出しながら、自宅で映画を見たり、菓子を食べたりする「Adultoween」が企業の調査や施策に現れた。日本でも、10代の仮装、30代の家族行事、一人で過ごす時間が同時に見えている。

ただし、「大人のハロウィーンが世界で大流行している」とは言えない。Adultoweenを名付けたFerreroは菓子メーカーであり、調査は自己申告である。米国と日本の資料は、対象も質問も異なる。それでも四つの資料を重ねると、同じ日に同じ場所へ集まることだけが参加ではなくなり、見る、食べる、飾る、出かける、共有するという小さな行動を、時間・場所・人数に合わせて選ぶ行事が見えてくる。

この変化は季節キャンペーンを大きな一日に集中させる前に、誰がどの入口から参加できるかを考え直す材料になる。

ハロウィーンは、大人のための数週間にもなった

直近のきっかけは、Ferrero Groupが2026年10月29日に公表した「Adultoween」調査である。米国、カナダ、英国、豪州の成人を各1,000人、計4,000人調べた。同社は、ハロウィーンが子どもだけでなく、大人も数週間にわたって楽しむ行事になったと説明している。1

米国では69%が、ハロウィーンを子ども時代の習慣と再びつながる機会だと捉えた。4市場を横断した公式要約では、約6割が、好きなホラー映画やシリーズを見る、家族や友人と家で集まる、好みの菓子を食べるといった、小さく楽しみやすい場面とハロウィーンを結び付けている。1

ここで変わっているのは、子どもの行事がそのまま大人へ移ったことではない。子どものころの記憶を、現在の生活に入る大きさへ組み替えている点である。仮装パーティーを開かなくても、映画一本、季節包装の菓子一袋、玄関の飾り一つで参加できる。ノスタルジーは過去の完全な再演ではなく、いまの時間と負担に合わせて習慣を選び直す理由になっている。

ハロウィーン向けの菓子をまとめたFerreroの季節商品パッケージ
Ferreroの報道向けMedia Assetsで配布されている季節商品の製品画像。季節包装の菓子は、自宅で食べる、配る、置いておくという小さな参加の入口になる。ただし、この画像は2026年調査の対象商品や売上実績を示すものではない。 — Ferrero Group Media Assets(配布素材)

一方、Adultoweenは、Ferrero自身が菓子販売と結び付けて発信する販促語でもある。調査対象者の回答と、企業が作った「文化的運動」という説明は分けて読む必要がある。公開ページから確認できるのは、調査人数、国、時期、いくつかの回答までで、全質問票、国別の詳細表、実際の購買や参加の増加は分からない。

広がったのは参加者だけでなく、参加方法である

企業が名付けた言葉から少し離れ、米国の継続調査を見る。全米小売業協会(NRF)が2005年から行う2026年調査では、消費者7,889人の74%がハロウィーンを祝う予定だった。2025年の73%とほぼ同じで、参加者が一年で急増したとは言えない。2

その一方で、参加の時期と行動は一日に収まらない。49%が9月以前に買い始めると答えた。2016年は34%だったため、買い物の入口は10年で早まっている。主な行動は、菓子を配る61%、仮装する50%、自宅や庭を飾る42%、カボチャを彫る42%、怖い映画を見る42%だった。調査は複数回答で、出かけるか家にいるかの二択ではない。2

支出も同じように読む必要がある。NRFは2026年の総支出を135億ドル、1人あたりを115.14ドルと予測した。2025年の131億ドル、114.45ドルより名目額は増えるが、これは9月時点の予定であり、実際の販売額ではない。参加率がほぼ横ばいでも、開始時期、買うカテゴリー、価格、繰り返し使う飾りなどが変われば、支出の総額は動く。大きな市場という数字だけでは、誰が何をした結果なのかは分からない。

ここから得られるのは、「大人を狙えば売れる」という結論ではない。行事を一つの典型行動で捉えず、複数の入口へ分ける必要があるということだ。

  • 時間:当日だけか、数週間か
  • 場所:街、店舗、イベント会場、自宅、オンライン
  • 人数:一人、家族、友人、地域
  • 行動:見る、食べる、飾る、仮装する、配る、出かける
  • 負担:予約、移動、服装、費用、他人との調整

参加方法が増えると、同じ人が複数の入口を使う。9月に飾りを買い、10月の週末に家で映画を見て、当日は菓子を配ることもできる。人数を足し上げるだけでは、この重なりを捉えられない。

日本では、10代・家族・一人が同時にいる

日本の2026年データは、米国の「大人化」をそのまま移せないことを示す。カレンダー共有アプリTimeTreeに登録された匿名化予定データでは、10月に「ハロウィン」を含む予定は1万件あたり27.0件だった。2019年の28.5件に対して約95%で、2024年以降はほぼ横ばいである。3

年代別では、10月全体で30代が45.0件と最多だった。保育園、幼稚園、学童などの語を含む予定もあり、親子の行事が多い。一方、土曜日だった10月31日だけを見ると、10代が290.7件で、30代の242.8件を上回った。10代の10月全体の予定も、2023年の18.6件から2026年の31.8件へ3年続けて増えている。3

2023年から2026年までの年代別「ハロウィン」予定数。30代が最多を保ちながら、10代が年々増えている
10月全体では30代が最多だが、10代の予定は2023年から連続して増えた。数値はTimeTree利用者が登録した予定タイトルを、各年10月20日まで、登録予定1万件あたりに標準化したもの。全国民の参加率ではない。 — TimeTree未来総合研究所(PR TIMES配布素材)

別の側面を示すのが、マクロミルの日本調査である。2026年のハロウィーンに予定がある15〜69歳1,030人では、自宅でパーティーや特別な食事をする予定が43.6%で最も多かった。一人で楽しむスタイルに「共感する」は48.1%、「理解はできるが、自分は大勢や身近な人と楽しみたい」を加えると86.7%だった。4

48.1%を「日本人の半数が一人でハロウィーンを過ごす」と読み替えてはいけない。本調査は、全国10,000人のスクリーニング後に、すでに予定がある人へ聞いたものだ。しかも尋ねたのは実際の一人参加ではなく、そのスタイルへの共感である。それでも、自宅や一人で楽しむ方法が、予定者にとって理解できる選択肢になっていることは分かる。

三つの資料を同じ数字として比べることはできない。比べられるのは、何を測ると、どの参加者が見えるかである。

  • Ferrero|4カ国の成人4,000人|ノスタルジーと自宅の小さな祝いが見える|実購買・実参加は分からない
  • NRF|米国消費者7,889人|参加予定、買い始め、複数の行動が見える|実績ではない
  • TimeTree|日本の匿名化予定タイトル|年代、日付、地域による予定の違いが見える|アプリ外の人や実行結果は分からない
  • マクロミル|日本の予定者1,030人|自宅・一人への共感が見える|全国民の参加率ではない

「米国は大人、日本は子ども」と分けることも、「どちらも一人化している」とまとめることもできない。若者、親子、大人、一人で過ごす人が、異なる時間と場所で同じ季節へ参加している。

ブランドは大イベントではなく、入口を層にする

季節イベントを設計する側が見直せるのは、ターゲットの年齢より、参加の単位である。会場へ来た人だけを参加者と定義すると、自宅で見た人、商品を一つ選んだ人、翌週に友人へ話した人が消える。逆に、SNSで見た全員を参加者と呼べば、体験の深さが分からなくなる。

Ferrero傘下のKeeblerが2026年に実施した「Spookie Stripes Safari」は、入口を分けた例である。米国内6カ所の動物園では、縞模様の動物を探す現地体験を用意した。同時に、商品パッケージのQRコードから、スマートフォン上のデジタル動物園でも遊べるようにした。現地では入園料や移動が必要だが、自宅版は動物園へ行かなくても参加できる。5

この施策の参加人数、商品の購入効果、満足度は公表されていない。成功事例と断定せず、同じテーマを「現地」と「自宅」へ分けた実装として見る。簡易版を劣った代替にせず、それぞれで完了できる行動を用意した。現地なら本物の動物を探す。自宅なら画面内の生息環境を探索する。入口が違っても、「縞を探す」という同じ遊びが残る。

参加しないと完成しない体験を扱った記事では、本人の時間と選択が体験の意味を変えると整理した。ただし、参加は遠くへ出かけることに限らない。見る、選ぶ、食べる、飾るという行動でも、結果が人ごとに変われば参加になる。ブランド体験を時間でつなぐ考え方と合わせると、季節施策は当日の会場だけでなく、知る、準備する、当日を過ごす、片付ける、思い出すまで設計できる。

実務では、四つを分けて企画したい。

  • 入口:見るだけ、買う、家で試す、現地へ行くのどこから始められるか。
  • 核となる行動:そのブランドの商品や来歴と結び付く、具体的な動詞は何か。
  • 組み合わせ:一人と家族、自宅と現地、短時間と長時間を行き来できるか。
  • 測定:到達、参加開始、完了、別の入口への移動、再参加を区別できるか。

菓子ブランドなら「食べる」「配る」が商品と直接つながる。動画サービスなら「一本見る」、小売なら「飾りを一つ選ぶ」、地域イベントなら「安全に歩く」が核になりうる。流行語に乗る前に、その企業が提供できる行動と、参加者が払う時間・費用・調整の負担を対応させる必要がある。

「選べる季節」をつくる3つの学び

1. 参加と外出を分ける

NRFの行動一覧には、仮装や飾り付けと並んで、映画を見ることも入っている。マクロミルでも自宅の食事が最多だった。参加者を会場来訪者だけにすると、自宅で完了する価値を見落とす。

展示会、周年、スポーツ観戦でも同じである。現地でしか得られない価値を守りつつ、見る、試す、記録するという別の入口を用意する。次の企画では、移動できない人が同じテーマへ参加し、何を一つ終えられるかを書き出したい。

2. ノスタルジーを、昔の再演ではなく選択肢へ変える

Ferrero調査で米国成人の69%が子ども時代とのつながりを感じたことは、昔と同じ仮装やパーティーを再現すればよいという意味ではない。大人には仕事、家族、費用、体力の条件がある。記憶の核を残し、現在の生活に入る大きさへ変える必要がある。

復刻商品、周年企画、過去作品の再上映にも応用できる。残すべき色、味、音、遊び方は何か。短時間、一人、自宅という参加方法へ変えても、その対象だと分かる手がかりは何か。懐かしさをコピーで宣言する前に、一つ選ぶ。

3. 大きさではなく、参加の組み合わせを測る

参加率、来場者数、売上、投稿数は別の指標である。TimeTreeでは月全体と当日だけで年代順位が変わった。測る時間を一日に固定すると、30代の家族行事と10代の当日参加のどちらかを見失う。

一人が何種類の入口を使ったか、最初の行動から次の行動へ移ったか、終わった後にまた参加したかを見る。まずは来場者アンケートへ「来る前に何をしたか」「会場に来なくてもしたことはあるか」を足す。季節を長くするとは、販促期間を前倒しすることではなく、参加者が自分の条件で選べる入口を増やすことである。

大人はハロウィーンを子どもから取り戻したのではない。米国では大人のノスタルジーと自宅の小さな祝いが可視化され、日本では30代の家族予定、10代の当日参加、一人時間への共感が並んだ。ブランドが学べるのは、典型的な参加者を一人に決めることではない。時間、場所、人数、行動を分け、誰もが同じことをしなくても季節へ入れるようにすることである。


資料確認日:2026年10月31日。Ferreroとマクロミルは企業による自己申告調査、NRFは参加・支出予定、TimeTreeはアプリ内の予定タイトルであり、実際の参加・購買・社会全体の流行を直接測るものではない。米国と日本の割合は母集団と質問が異なるため、数値の大小を直接比較していない。Xの個別原投稿、投稿日時、反応量は確認できず、話題量の根拠にしていない。

Sources / 参考資料